風の谷のナウシカの“その後の物語”――『風の谷ナウシカ エピソード2
漫画版 風の谷のナウシカのラスト
漫画版風の谷のナウシカ、映画では描かれなかった映画のあとの話、分かりにくい表現…。ナウシカが急に世界のすべてを悟り、墓所を破壊した背景には、漫画のセリフの裏に隠された以下の「点と線」がありました。
• 腐海の真実: 腐海や王蟲は自然物ではなく、旧人類が世界を浄化するために作った「人工システム」だった。
• 人間の体の真実: 現生人類(ナウシカたち)もまた、毒(汚染物質)がないと生きられないように遺伝子を改造されていた。世界が完全に綺麗になると、免疫が暴走して血を吐いて死んでしまう「使い捨ての掃除道具」だった。
• 墓所の計画: 世界が綺麗になった後、墓所で眠る「清浄な新人類の卵」を目覚めさせて新しい世界を始めさせる。
ナウシカは、自分たちの命が過去の亡霊にプログラムされていたことが絶望的に許せませんでした。「私たちは闇でいい」と言い放ち、墓所を破壊。しかし、「このままでは人類はいずれ綺麗になった世界で滅びる」という残酷な嘘を一人で抱え、みんなの前から姿を消します。そして女王にはならず摂政として泥臭い復興を引き受けたクシャナ。
歯車が狂い始めた世界
墓所が破壊されてから数十年。世界は少しずつ変貌していました。腐海の浄化スピードが上がり、世界の一部で「完全に不純物のない綺麗な空気と水」の領域(清浄の地)が広がり始めたのです。
• クシャナの現実:民の謎の大量死クシャナが治める復興地域では、ある時期から原因不明の奇病が流行り始めます。前触れもなく、人々が血を吐いて次々と死んでいくのです。現実の政治を担うクシャナは、原因も分からぬまま、絶望する民たちの暴動と国の崩壊を食い止めるために奔走していました。
• ナウシカの選択:嘘を守るための「神格化」地下室の研究と墓所での戦いで「綺麗な空気では人間は死ぬ」という理由を唯一知っているナウシカ。彼女は「今の人類を少しでも長く生かすためには、これ以上世界を綺麗にしてはならない(清浄の地へ人を近づけてはならない)」と決断します。
ナウシカは真実を隠したまま、圧倒的なカリスマと超能力で土鬼(ドルク)の民たちをまとめ上げ、いつしか全員に「神(救世主)」として崇められる巨大な宗教国家のトップに君臨していました。
激突の理由:どちらの正義もない「生存の衝突」
二人の決裂は、クシャナ率いるトルメキアの民が、奇病(汚染の地から清浄の地への変化)から逃れるために、ナウシカの管理する領域へと生存圏を広げようとしたことから始まります。
• ナウシカの言い分(神の支配)「これ以上こちらに来てはならない。そなたたちの身体は、清浄な風に触れれば血を吐いて死に絶える。私は、今生きているこの命たちを、(嘘を抱えてでも)守らなければならないのだ」
• クシャナの言い分(人間の誇り)「私たちは誰かに管理され、騙されたまま生きたくはない。たとえこの先に滅びが待っていようとも、民を率いて進む。それが現実を生きるということだ。道をあけよ、ナウシカ」
どちらが正しいわけでもありません。ナウシカは「人類を絶滅から守るというエゴ(歪んだ母性)」のために。クシャナは「自分を信じる部下や民の、いま現在の生存」のために。相容れない二人の生存戦略は、ついに最悪の選択肢を呼び覚まします。――「巨神兵の復活」です。
巨神兵vs巨神兵:圧倒的な火力のぶつかり合い
かつて世界を7日間で焼き尽くした「火の7日間」は、何千もの巨神兵が暴れました。しかし今回は、ナウシカ側とクシャナ側でたった1体ずつの巨神兵。世界を完全に消し去るほどの数はないけれど、人間たちを蹂躙するには「圧倒的すぎる火力」でした。ナウシカは「汚れた嘘」を守るために、クシャナは「人間の現実」を守るために、かつて封印した神の火を放ち、大地をドロドロに溶かし合いながら戦う泥沼の戦争へと突入します。
クシャナの妥協そして戦いの決着
軍団を率いた戦に関してはやはりクシャナが格上。この戦いの最中、ナウシカは巨神兵の放つ強烈な毒(放射線)とクシャナ軍の決死の猛攻を浴び、肉体の半分を失う大重傷を負います。クシャナは全軍に対し勝利の雄たけびを上げ、人類の勝利を確信。
しかし、土鬼に伝わる不死の肉体(ヒドラの遺伝子)を自らに移植することで不気味に復活、黒いマントを羽織ります。この時を境に、彼女はかつての優しさを完全に捨て去ります。
巨神兵同士の凄惨なぶつかり合いの果てに、戦局は泥沼化します。クシャナは、これ以上戦争を続ければ、自分が守りたかった「現実の人間たち」が巨神兵の火力に巻き込まれ、流れ弾で全員死んでしまうと冷徹に悟ります。
憎しみで相手を全滅させるのではない。「自分のため、民のため」に始めた戦いだからこそ、クシャナは自分の意志で引き際を決めます。「これ以上は、割に合わん。私の命ひとつでこの不毛な戦いが終わり、民の生存圏が少しでも残るなら、それでいい。ナウシカの覚醒を信じるぞ!」クシャナはナウシカの「圧倒的な神の火力」の前に、あえて自ら敗れ去る道を選びます。彼女は誇り高く散って行きました。次世代の人々とナウシカに未来を託して命を散らせた最期でした。
クシャナという「唯一、ナウシカに否を唱えられる現実の主役」を失ったことで、世界はブレーキを失い、黒い帝王ナウシカによる200年間の暗黒支配へと突入していくのです。
清浄化されれいく世界の空気の中で自らの体を維持するための「微量の瘴気を循環させる黒いヘルメット」を身に纏うようになります。――「黒い帝王」の誕生です。
――(『エピソード3』へ続く)
