日産よ、どこへ行く。今こそ求められる「己の色」への回帰

出典:日産自動車株式会社 公式サイト(nissan.co.jp)より引用

かつて、日本の自動車市場には美しく、長きにわたる「役割分担」が存在していた。
例えばがホンダ、彼らは常に「最先端」という言葉の象徴だった。内燃機関の全盛期には、F1を筆頭に世界を震え上がらせる最強のエンジンを作り上げた。そして、仮に本格的なEV(電気自動車)の時代が到来するならば、彼らはその圧倒的な先進性でEVの領域でも文句なしの最強を誇るだろう。
彼らの本質は、常に誰も到達していない未開の地を切り拓くことにある。二輪から始まり、四輪へ進出し、やがてはジェット機(ホンダジェット)で空へと飛び立つ。その姿は、常に新しい刺激を追い求め、次々と最先端を塗り替えていく天才のそれだ。

出典:日産自動車株式会社 公式サイト(nissan.co.jp)より引用


だが、日産は全く違う。不器用で、武骨。洗練されたスマートさなど端から持ち合わせていない。だが、それでいて日常では、家族への優しさを極限まで詰め込んだセレナ (https://www.google.com/search?kgmid=%2Fm%2F0gjy9m&q=%E3%82%BB%E3%83%AC%E3%83%8A)のような名車を仕立て上げてみせる。この圧倒的なギャップと泥臭さこそが、日産が死守すべき「色」に他ならない。
評論家の視点から見れば、近年の日産が世界で露呈させた大失策は、まさにこの自らの色を見失い、ホンダの真似事をして最先端を気取ろうとしたことによる自滅である。現在の経営危機は、起こるべくして起きた「案の定の結末」だ。


迷走の真因:流行の幻影に踊らされた「やってるフリ」の破綻


素人目に見ても、主戦場であるアメリカ市場がEVへ全面シフトなどしていないことは明白だった。インフラの未整備や広大な国土という現実、そして現場の消費者が求めるリアルなニーズを無視し、日産の上層部は「これからはEVの時代だ」という政治主導のブームに踊らされて突っ走った。
さらに歪だったのは、本来の稼ぎ頭であるべき本格ハイブリッド(HV)の開発を後回しにし、海外ではマイルドハイブリッドで「賢くやってるフリ」をして時間を稼ごうとした点だ。このお茶濁しの期間が長すぎた結果、消費者はその中途半端さに見向きもしなくなり、ライバルの本格HVに顧客を根こそぎ奪われた。手元には「売れないEV」と「見破られたマイルドHV」しか残らないという最悪の挟み撃ちに遭ったのが、今回の崩壊の本質である。カルロス・ゴーン (https://www.google.com/search?kgmid=%2Fm%2F04v16_&q=%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%B3)氏がかつて断行した「選択と集中」の冷徹な決断力を、今の経営陣は完全に忘れてしまっている。


制御の妙:S15というレスポンスマシンが証明する「日産の骨っぽさ」

日産の車は、スマートに回る必要などない。少し蛇口をひねる(圧力をかける)だけで、どかんと強烈なトルクが立ち上がる。この「弄りがい」こそが、日産のロマンそのものだった。
かつて私が完全に自分自身の手で仕立て上げたシルビア(S15)が、まさにその生き証人だ。エンジン内部こそ手を付けなかったが、それ以外のすべてをモディファイし、300馬力超のレスポンスマシンへと昇華させた。
基本の過給圧は1.0kgに設定し、これを機械式アクチュエータで「それ以上にならないよう」しっかりと物理的に抑え込む。そのうえで、コンピュータ(パワーFC)を使って緻密に制御を追い込んでいく。このアナログなベースとデジタルな微調整の組み合わせこそが、抜群のレスポンスと乗り味を生み出す最高のバランスだった。さらに足回りはすべてリジッドに組み、路面の情報をダイレクトに伝えるスパルタンな仕様に徹した。
骨格がバカみたいに頑丈だからこそ、こうした過激なモディファイにもどこまでも応えてくれる。R32のRB26DETTやS15 (https://www.google.com/search?kgmid=%2Fg%2F122qmhbj&q=S15)のSR20DETが乗り手を狂わせたのは、その圧倒的なタフさと、強引にねじ伏せて進む獰猛さがあったからだ。


今後どうあるべきか:5本柱への戦力集中とEVの即時撤退


今の苦境から日産が這い上がるためのシナリオは、極めてシンプルだ。見栄えだけのEV戦略を即座に切り離して捨て去ること。そして、「ホンダに何と言われようが、俺たちはEVなんか作らない」とプライドを取り戻し、以下の5本柱にすべての資源を一点集中させるべきである。
• マッシブGT-R: 四駆テクノロジーの暴力を極めた、ブランドの絶対的な象徴
• エレガントZ: 昔の240Z(S30型)やZ32 (https://www.google.com/search?kgmid=%2Fg%2F11w3qgp8q_&q=Z32)の面影を現代に蘇らせた、現場の意地が詰まったFRスポーツ
• セレナ (https://www.google.com/search?kgmid=%2Fm%2F0gjy9m&q=%E3%82%BB%E3%83%AC%E3%83%8A): 家族のための高い実用性を持ちながら、きびきび走れるミドルミニバン
• エルグランド (https://www.google.com/search?kgmid=%2Fm%2F03zd0z&q=%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89): 地を這うような走りと、最高級の居住性を両立したフラッグシップミニバン
• 本格4駆SUV: 「e-4ORCE (https://www.google.com/search?kgmid=%2Fg%2F11rvglh0ws&q=e-4ORCE)」や「ALL MODE 4x4-i」で世界中の悪路をねじ伏せるタフギア
現行の新型Z(RZ34)を見たとき、誰もが「よくやった!」と拍手を送りたくなったはずだ。社内が電動化に傾くなかで、僕らと同じ『西部警察』を観て育った世代の開発陣が、「日産の骨っぽさを絶やしてたまるか」と執念で形にしたデザインとスペック。あのまばゆい輝きを放つ名車をディーラーの主役に据え、お父さんたちに「いつかはZ」という人生のストーリーを再び提供できるメーカーに戻ること。
最先端のスマートな技術や、飽きっぽくも常に先へ行く挑戦は優秀なホンダに任せておけばいい。不器用でもいいから、自分たちの信じた頑丈なベースを力強く制御し、乗り手をニヤリとさせる。そして家路につけば家族を温かく包み込む。そんな「マッシブで、武骨で、家族に優しい日産」のカラーを死守することこそが、この時代に日産が生き残る唯一無二の道である。